2023年11月8日水曜日

ドラフト会議を見て

 



速報プロ野球ドラフト会議、当HPでも紹介しましたが、小耳症の男の子が見事楽天3位で指名されたTBSの番組、見て感動をもらった方も少なくはないのではないでしょうか。私も見ましたが、朴訥とした印象の中に彼の気持ちや意思が良く伝わってきました。我々もこれまで何度かメディアの取材を受けたり番組の協力をしたりという機会があったのですが、メディアの方達の心の持ち方でこちらの対応も変わってきます。やはり対象者に対する強い興味や愛情がなければ、細かな機微は伝えることができませんし、そういう気持ちでできる限りのことを引き出そうと思ってくる方に対しては、こちらも、こういうことができますよ、こういうところなら見せられますよ、という感じで一緒に制作していく意識が持てて、より良いものができていきます。過去に未来シアターに出た際には、製作の方が非常に高い意識でお越しになったので、短期間ではあったものの、お互いに感覚が共有できました。今でも雨のちハレルヤの曲が流れるだけで涙するお母さんたちがいることを聞くと、いかにあの番組が共感をいただいたか伝わってきます。今回の番組も、制作の方達は恐らく相当勉強し、また家族にも受け入れられる熱意で取材しただろうことが伝わってきたので、そういう点で非常にレベルの高い番組であったと感じました。

 

さて、手術をしない選択・・・当然これも立派な選択肢の一つです。耳介を形成するために本手術で肋軟骨を採取するということは、患者にとって負担が一番かかる点です。術後2か月間(慣らしの期間を考えるとさらに1か月程度)の激しい運動禁止は、ぎりぎりで体を使っているアスリートにとっては大きなブレーキとなることでしょう。またその後も耳や胸をかばう動作が入ってしまったりする可能性もありますし。でも小耳症患者が今後の彼の活躍を応援してくれたらきっと彼にとっても大きな励みになるのではないでしょうか。

 

一方で、耳を作るということは、手術をして耳ができた、マスクや眼鏡がかけられた、というだけの事象ではありません。また手術をしないと、耳が見えることに対しナーバスになる、人の目が気になる・・・という意識は一生続くわけですが、手術をすることで、耳が見えても気にしなくなる、という普通の生活ができるようになる点も大きいと思います。本人にとってのコンプレックスから解放され、自分に自信を持ち、より積極的な形で社会生活、社会貢献をしていけるようになる、という点は、目に見えない部分ではあるものの、この仕事をしてきて非常に強く感じます。手術の後、本人や家族から、手術をしてから凄く変わりましたとよく連絡をいただきますし、それが私にとっての活力にもなっています。彼の場合は、体を極限に使って生きていく仕事のために、手術をしないという選択をしたわけですが、手術が怖いから手術しない、という気持ちを、彼の判断に重ねてすげ変えるのは少々違うと思いますので。


一つあの番組の中で気になったことを記載します。医師が、これ以上年齢が上がると手術が難しくなるという点です。私は常々手術の至適年齢は1120歳とお伝えしています。これはこの範囲内であれば、良いクオリティーの耳をプレゼントできるという意味です。ただし、20歳以上の方でも耳を作れないことはないのです。クオリティーが下がり、軟骨の綺麗なカーブが作りにくくなる、ごつごつ感が強くなる、などの傾向があるものの、作れないわけではないということです。私は最高齢74歳の方の手術もしたことがあります。さすがに苦労しましたが。45歳の小耳症の方の術前術後の写真を載せますが、クオリティーが落ちると言ってもぱっと見では気付かれない程度の結果は出せるかと思います(中には軟骨が異常に硬い方もいますので、もっと結果が落ちる場合もあるかと思いますが)。もし20歳を超えて、もう耳は作れないと思っていた方も諦める必要はありませんよ。

 

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