2025年1月7日火曜日

明けましておめでとうございます

 昨年の小耳症に関連する手術件数・・・HPの診療実績にも掲載しますが、札幌医大病院と札幌中央病院を合わせると、332件(軟骨移植101件、耳介挙上111件、その他120件)でした。

昨年は個人的にも波乱の1年でありました。春早々に左人差し指の伸筋腱断裂・・・指固定のみして、手術は休みませんでしたが、これはもうこれまでの蓄積した負荷による消耗でしょうね。負荷と手術時間は相関しているような気がします。

他施設で肋軟骨移植というと、通常56時間、耳介挙上でも3時間くらいかかっているのではないかと思います。当科では肋軟骨移植で2.53時間。耳介挙上は1.5時間(種々の難しい条件が加わると延長しますが)位で終わっています。体の負担を考えると手術時間が短いに越したことはないですからね。勿論一切手を抜いたりなんてしていませんよ。時間が短縮するためには種々の要因があるのですが、大きく以下の3つがあげられるかと思います。

1)       医師陣の熟練:通常医師4人で手術を行い、耳と胸で2人ずつに分かれて同時にスタートします。これだけの件数の手術をやってきたわけですから、手術の手順等全員が熟知していて全く無駄がないですし、肋軟骨採取も非常に手早く行ってくれます。他の施設に比較してかなり小さい3cmの皮膚切開で肋軟骨を採取するので、簡単なわけはないのですが、早ければ1時間以内、遅くても1.5時間位で、恐らく他の施設より1時間以上早いと思います。手術場スタッフも熟練したチームとして非常にテンポよく機能しており、殆ど何も言わなくても、必要な材料を的確に出してくれます。これは中央病院の方でも完璧です。

2)       肋軟骨フレームの組み立て:肋軟骨フレームを組み立てるに当たり、恐らく私以外の方は、3本軟骨が取れてから初めて、どこからどう作製するかを考えると思うのですが、私は1本取れた段階からすぐに作製に入ります。これだけでも1時間近い短縮になります。ただ、これはかなりの経験を積まないと対応できない技だと思っており、フレームのイメージや、肋軟骨のイメージがいつからか自然に頭の中に出来上がっていたので、迷わず間違いなくいけます。小耳症の手術を迷うことなく進めることで、相当の時間の短縮になります。

3)       皮膚の操作:皮膚に負荷をかけずに皮膚の血流を維持して皮下の剥離を行うのは、小耳症手術が難しいとされる一つとして挙げられるのですが、これには全ての指を使って傷の展開をして、視野を広げ、同時にハサミやメスが皮膚に当たる感触を指で確認しながら、一気に行なっていくわけですが、これも他の先生にはなかなかまねできない芸当ではないかと思っています。この操作で指にかかる負荷は半端ではないということを、痛めてみて改めて認識した次第です。

これだけの手術と並行して、再生医療の治験を行っているのですが、現在再生医療法が非常に厳しくなっていて、厚生局への対応、特定再生医療委員会への対応はじめ、膨大な書類の作製、報告書等、ありえない負担がかかります。我々の研究も、こういう作業に精通している東大の臨床研究推進センターの方におんぶにだっこでやっとここまで来たという感じです。この法律だと、人に治験を持ち込めるところまで持って行ける施設も限りなく少なくなってしまうでしょうね。世界からどんどん取り残されていくわけです。

 さて、今年もかなり厳しい状況でのスタートになりますが、何とかつつがなく過ごせて行ければと思っております。本年も宜しくお願いいたします。

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