メッセージの期間が空いてしまいましたが、さぼっていたというよりは、本気で忙しくて首が回らない状態が続いていました。何が忙しいか説明するも大変なくらい仕事が多く忙殺され続けています。しかし、この状態から脱出できる時が来るとも思えず、ここに書くのも大事な仕事だと奮起して、少々書いていこうと思います。
そして、この度単著で初めての教科書を発刊しました!
タイトルは“局所皮弁塾!
実は、まぶた、鼻、口、耳、などに対する私が開発した顔面組織再建の術式は相当数あって、国内でもトップクラスかと思います。鼻や口の術式は海外でもスタンダードに行われたりしていて、Yotsuyanagy’s flap(flap=皮弁のこと)と、なぜか微妙にスペルが変わって定着したりしています。そういう術式や考え方を人に教える機会もいずれ作っていかないとな~と思っていたこともあり、じゃあやってみますか!と割と気軽な気持ちで返事をしたのですが、実際に始めてみたら、この忙しい中でそれを進めるのはなかなかにしんどく、結局2年で終わらせる予定が5年かかってしまったという経緯です。今年の前半はこの校正作業だけでもかなりの時間を要しました。表紙を赤くしたのは、”塾”と名前が付くからには、大学受験の赤本のイメージかなと思ったからです。
内容的には、皆様にとっては何のことやら?という感じかもしれません。ここをご覧になっている方は、小耳症で調べてたどり着いた方が殆どだと思いますので、小耳症=形成外科 は知っていても、形成外科が何をしているのか?についてはあまりピンと来ていない方が意外と多いのではないでしょうか。
形成外科とは、主に体表面の欠損や変形を修復する外科で、形成外科医は、組織移植を始めとする再建外科のエキスパートの集団です。例えば体の他の部位から組織を取ってきて、顕微鏡を使って1mm程度の血管同士を吻合して、移植する技術なんかも持っています。顔面外傷ややけどの治療、乳癌切除後の乳房再建、皮膚がんやあざの治療、顔面神経麻痺、皮膚の潰瘍、リンパ浮腫、口唇裂や多指症などの先天性疾患の治療などなど、形成外科の領域は多岐にわたります。
私は特に顔面の組織欠損の治療、をライフワークとして来ました。直接縫合できない範囲の顔の組織欠損に対し、近隣の余裕のある部分の皮膚や脂肪を、血流を維持したまま移動して、目や鼻が引っ張られたりしないように、そして傷跡が綺麗になるように治す代表的な術式が局所皮弁というものです。小耳症において、小さな耳を良い位置に移動して耳たぶにするのも、局所皮弁の一つです。一つの皮膚の欠損を修復するための局所皮弁の術式は多数あって、そのどれを選択するか、また患者に合わせてどのようにアレンジするか、が術者の腕の見せ所となるわけです。その考え方についての私の経験や、開発した術式を含め、代表症例を提示し、239ページのボリュームとなりました。ちなみに私は陰茎の再建もしますので、よく、子供たちに、ちんちん取ってこっちにくっ付けるぞ!としょうもない脅しをかけていますが、やろうと思えば本当にできるわけです(最近は、子供から下ネタか!とか、セクハラ~!と逆に厳しい突っ込みを受けることもあり・・・なかなか厳しい世の中になってきました)。
価格は12100円とお高めですが、医学書としては、この文量であれば、かなり良心的な金額ではないかと思います(出版社の方が頑張ってくれました)。勿論これを皆さんに買ってくださいと言っているわけではないですが、形成外科がどんなことをしているのか、そのイメージが理解いただけるかと思いますので、もし書店等にあった場合には、ちょっと覗いてみてください。隙間にちょっとした小話も書いてます。よく、先生は耳の手術しかしてないんでしょ?と言われますが、そんなわけはなく、小耳症は形成外科の中のほんの一部の領域なのです。