実際の講演時の風景、写真を送っていただいたのですが、なかなか見る機会がないと思うので、追加で写真載せます。
2025年7月19日土曜日
2025年7月17日木曜日
ソウルに行ってました
今回ソウル大学から招待され、Pioneering ear reconstruction and advances in aesthetic and facial
surgery というシンポジウムで講演をしてきました。30分の英語での講演・・・なかなかきつかったです。
千歳からの直行便もあったのですが、時間的な都合が合わなかったので、7/10、手術を終えた後、晩の飛行機で羽田へ移動。ご記憶の方も多いと思いますが、この時東京では激しい雷雨の日。羽田空港には降りたものの、1時間飛行機内で待機。着いたら晩御飯にどっか居酒屋へ~と目論んでいたのですが、翌朝早いことを考えるとそんな時間はなくなり、慌ただしく空港内のレストランでビールとから揚げで食事を済ませて空港近くのホテルにチェックイン!速攻で就寝。
翌朝7/11の5時に起きて空港へ。金浦空港まではほんの2時間20分なので、海外気分を味わうこともなくあっという間に到着です。ビップ待遇でタクシーが迎えに来てくれていたので、楽々ホテルにチェックイン。ただし、その日は招待者とのディナー!伝統の韓国料理を味わう気持ちの余裕もなく緊張の英会話で心身ともに疲れてホテルでダウン。
左が招待してくれたソウル大学Chang Hak教授、中央がDr Guichard |
台湾のDr Chun-Yuとシンポジウム会場にて |
7/12がシンポジウムで、4人の医師が講演をしました。一人は韓国のサムソン病院で長いこと耳の再建をやってきたというおじいちゃん先生のDr Hak Chang、次は台湾のチャンガン病院で耳の再建をやっているDr Chun-Yu
Tuが、メドポア(人工物)を使った耳介再建についての講演、次は私で、この数年で進化させてきた術式の紹介。最後はパリで、耳介再建で有名なFirmin女医が退官後の後継者のDr Stephane Guichard。講演も質問も勿論英語です。私の講演に関しては大いに興味を持っていただき、相当な数の質問が乱れ飛んで、四苦八苦しながら何とか私の経験と考え方をお伝えした次第です。同日は、一日丸ごとシンポジウムだったのですが、耳のセッションは午前のみで、午後からは韓国語での講演だったので、先に退室させていただいて、ちょっとだけ散策。ホテルから明洞まで歩いて20分程度だったのですが、実はソウルも灼熱の34度という状況だったので、少し歩いて雰囲気だけ味わって退散。夜は焼き肉を食べて終了。7/13朝に迎えのタクシーですぐ金浦空港へ。同日晩に無事札幌に到着しました。シンポジウムの前後の日にあちらの先生が招待者用にツアーを企画してくれていたのですが、私は全部パスしての弾丸ツアーとなりました。
明洞の風景 |
散歩で通りかかった伝統的な住居群 |
シンポジウムに参加してわかったことその一:意外と私の名前が知られていたのにびっくりでした。他の招待者たちも昨年のトロントの学会に出ていたそうで、お世辞かどうかわかりませんが、その時に私の結果を見て、ナンバー1だと思っていてくれていたそうです。第二:少し前までは、Brent、Firmin、Nagata、Park、とビッグネームがいたのですが、それらの方々が皆さん退官、逝去、などでいなくなってしまい、その次世代でのビックネームがなく、欧米を含め、多くの患者を一手に治療している医師が、今世界的にもあまりいないそうで、実は私がもしかしたら世界で最も多くの治療を行っている医師かもしれないという、少々衝撃的な指摘がありました。このような世界情勢は実際に海外の先生と直接触れ合ってみないとなかなかわからないものです。
ソウル大学病院内:日本と大差ないです |
で、今回は、トロントでの反省を踏まえ、2か月前から英会話テープを毎日聞いて、講演も原稿なしで話せるよう特訓し、私の歴史上もっとも英語を仕上げて行ったわけですが、多少やりとりできるようになっただけ、成果はあったかもとは思いますが、やはり何を言っているかわからない場面も多々あり、返答もせいぜい中学生レベルかな・・・という感じで。これからもちゃんと英語のトレーニングを続けて行けばもう少しましになるのかもしれませんが、なかなかそうも行かないもので、また海外発表等の機会があると、慌てて一からスタート、になってしまうのが悲しいところです。この年になると何よりヒアリングが最も苦手で、今更なかなか英語耳にはなれないのです。小さいうちから英語耳になっておくことをお勧めします。
2025年5月14日水曜日
春の形成外科学会
毎年春に、日本形成外科学会総会、という形成外科で最も大きな学会が行われます。これは主に臨床系の学会で、秋には基礎学会という研究系の学会があります。少々ここに出すのが遅くなってしまったのですが、今年は 4/16-18に東京、ホテルニューオータニで開催されました。私は小耳症の演題を2つ、他にうちの施設から2つと、計4つの演題を発表しました。また、今年は山田朗先生(前にトロントの学会で書いた先生です)が、海外招聘講演に招かれ、私はその座長をすることになったので、久しぶりに山田先生ともお会いしました。山田先生も小耳症に特化して治療しているわけではなく、先天性疾患全般の治療をされているようで、大変だなあ~という感じでした。
学会の内容としてトピックスはあまりなかったのですが、顔面移植のセッションは割と面白かったです。まだ日本では行われていない顔面移植・・・要は顔面の大部分を損傷した人に、他人の顔を丸ごと移植する、というもので、しばしばニュースなどでも取り上げられているので、目にした方もいると思います。素人目には、ついに医療もそこまで来たか、と思わせるものですが、腎臓などと違い、拒絶反応の強い他人の皮膚や筋肉などを移植した場合、拒絶反応を抑えるために、相当に強い免疫抑制剤を、移植されている限り続ける必要があり、治療を受けた大部分の人が、腎臓障害、感染、悪性腫瘍の併発、継続的な免疫抑制剤投与に対するストレスによる自殺、など、かなり悲惨な末路を迎えていることまでは知られていないと思います。そこまで踏み込んで報道されることはなく、マスコミの報道がいかに偏っているか良くわかる事例だなと思います。
ちなみに前回メッセージで書いた教科書ですが、この学会で始めて書店に並ぶことになりました。誰も買ってくれないと悲しいところなので、売れ行きが少々気にはなったのですが、私よりも、全日本出版会の社長と本書担当の方が販売ブースからちょっと離れたところで、心配そうに並んで立っていて、あ、本持った!あ、売れた!と盛り上がっていたので笑ってしまいました。おかげさまで、好調な売れ行きで少々安堵した次第です。
宿は近くに取ったのですが、今東京のホテルは値段が高すぎです!かなり探して良心的な額のホテルを見つけたのでまだ良かったのですが、ホテルとの往復はアップダウンが激しくて消耗しました。東京って、意外と坂が多いんですね。そして、私の学会中の唯一の楽しみは朝の散歩です。毎度これを書くと、遊びに行ってるんじゃないかと思われてしまいがちですが、決してそんなことはなく、日中は、学会場で専門医更新のための単位の取得に励んでおりますので。通常知らない街だと散歩もテンション爆上がりなのですが、東京は、散歩には不向きなところなので、あまりテンションがあがりません。だからと言って、していないということでは勿論ないので、初日は国会議事堂、TBS、など赤坂界隈、翌日は皇居を1周(走ってないです。散歩です)、さらに翌日は市谷から新宿方面に向かって住宅街を抜けて、四谷の方に戻る、という感じで、早起きをして1~2時間程度かけてぶらぶらする、という感じです。場所柄的に警備している警官の前を多数通り過ぎましたが、愛想がなさすぎてちょっと良くないなと思いました。愛想を振りまく必要はないのですが、おはようの一言もなく、ただ、じっと見つめてくるのは、過去に職質を何度も受けた立場としては、あまり感じが良くないです。人にもよりますが、札幌でアメリカ領事館前に立っている警官はちゃんとおはようございます、と挨拶してくれます。
そして、ニューオータニと言えば、ホットケーキ!ということで、前からなかなかチャンスがなかったのですが、今回は、ついに念願のホットケーキでランチしました。一人スーツ姿でホットケーキ食べている姿は人にはあまり見せられないですね・・・。味としては、ホットケーキ以上でも以下でもなかった、というところでしょうか。
2025年4月30日水曜日
入院期間について(7月手術予定の方へ)
7月手術予定の方にお知らせです。入院案内の方すでに送ってしまったのですが、入院期間のところに一か所誤りがあります。退院後3日程度の通院が必要と記載されているのですが、通院は不要で、手術日より3週間の入院のみ(勿論傷の治りが遅れる方もいるのでぴったりこの期間で帰れるかどうかは経過次第ですが)となります。退院したらすぐに帰宅いただいて結構です。
一時期病院の改修でベッド数が減らされていた時期があったため、早めに退院+通院という形でお願いしていたのですが、病棟の改修が終わり、ベッド数が戻ったので、通院不要に戻っております。書類を直すのを忘れてましたので、お詫びして訂正させていただきます。
2025年4月19日土曜日
(耳ではないですが)教科書を書きました
メッセージの期間が空いてしまいましたが、さぼっていたというよりは、本気で忙しくて首が回らない状態が続いていました。何が忙しいか説明するも大変なくらい仕事が多く忙殺され続けています。しかし、この状態から脱出できる時が来るとも思えず、ここに書くのも大事な仕事だと奮起して、少々書いていこうと思います。
そして、この度単著で初めての教科書を発刊しました!
タイトルは“局所皮弁塾!
実は、まぶた、鼻、口、耳、などに対する私が開発した顔面組織再建の術式は相当数あって、国内でもトップクラスかと思います。鼻や口の術式は海外でもスタンダードに行われたりしていて、Yotsuyanagy’s flap(flap=皮弁のこと)と、なぜか微妙にスペルが変わって定着したりしています。そういう術式や考え方を人に教える機会もいずれ作っていかないとな~と思っていたこともあり、じゃあやってみますか!と割と気軽な気持ちで返事をしたのですが、実際に始めてみたら、この忙しい中でそれを進めるのはなかなかにしんどく、結局2年で終わらせる予定が5年かかってしまったという経緯です。今年の前半はこの校正作業だけでもかなりの時間を要しました。表紙を赤くしたのは、”塾”と名前が付くからには、大学受験の赤本のイメージかなと思ったからです。
内容的には、皆様にとっては何のことやら?という感じかもしれません。ここをご覧になっている方は、小耳症で調べてたどり着いた方が殆どだと思いますので、小耳症=形成外科 は知っていても、形成外科が何をしているのか?についてはあまりピンと来ていない方が意外と多いのではないでしょうか。
形成外科とは、主に体表面の欠損や変形を修復する外科で、形成外科医は、組織移植を始めとする再建外科のエキスパートの集団です。例えば体の他の部位から組織を取ってきて、顕微鏡を使って1mm程度の血管同士を吻合して、移植する技術なんかも持っています。顔面外傷ややけどの治療、乳癌切除後の乳房再建、皮膚がんやあざの治療、顔面神経麻痺、皮膚の潰瘍、リンパ浮腫、口唇裂や多指症などの先天性疾患の治療などなど、形成外科の領域は多岐にわたります。
私は特に顔面の組織欠損の治療、をライフワークとして来ました。直接縫合できない範囲の顔の組織欠損に対し、近隣の余裕のある部分の皮膚や脂肪を、血流を維持したまま移動して、目や鼻が引っ張られたりしないように、そして傷跡が綺麗になるように治す代表的な術式が局所皮弁というものです。小耳症において、小さな耳を良い位置に移動して耳たぶにするのも、局所皮弁の一つです。一つの皮膚の欠損を修復するための局所皮弁の術式は多数あって、そのどれを選択するか、また患者に合わせてどのようにアレンジするか、が術者の腕の見せ所となるわけです。その考え方についての私の経験や、開発した術式を含め、代表症例を提示し、239ページのボリュームとなりました。ちなみに私は陰茎の再建もしますので、よく、子供たちに、ちんちん取ってこっちにくっ付けるぞ!としょうもない脅しをかけていますが、やろうと思えば本当にできるわけです(最近は、子供から下ネタか!とか、セクハラ~!と逆に厳しい突っ込みを受けることもあり・・・なかなか厳しい世の中になってきました)。
価格は12100円とお高めですが、医学書としては、この文量であれば、かなり良心的な金額ではないかと思います(出版社の方が頑張ってくれました)。勿論これを皆さんに買ってくださいと言っているわけではないですが、形成外科がどんなことをしているのか、そのイメージが理解いただけるかと思いますので、もし書店等にあった場合には、ちょっと覗いてみてください。隙間にちょっとした小話も書いてます。よく、先生は耳の手術しかしてないんでしょ?と言われますが、そんなわけはなく、小耳症は形成外科の中のほんの一部の領域なのです。
2025年1月7日火曜日
明けましておめでとうございます
昨年は個人的にも波乱の1年でありました。春早々に左人差し指の伸筋腱断裂・・・指固定のみして、手術は休みませんでしたが、これはもうこれまでの蓄積した負荷による消耗でしょうね。負荷と手術時間は相関しているような気がします。
他施設で肋軟骨移植というと、通常5~6時間、耳介挙上でも3時間くらいかかっているのではないかと思います。当科では肋軟骨移植で2.5~3時間。耳介挙上は1.5時間(種々の難しい条件が加わると延長しますが)位で終わっています。体の負担を考えると手術時間が短いに越したことはないですからね。勿論一切手を抜いたりなんてしていませんよ。時間が短縮するためには種々の要因があるのですが、大きく以下の3つがあげられるかと思います。
1)
医師陣の熟練:通常医師4人で手術を行い、耳と胸で2人ずつに分かれて同時にスタートします。これだけの件数の手術をやってきたわけですから、手術の手順等全員が熟知していて全く無駄がないですし、肋軟骨採取も非常に手早く行ってくれます。他の施設に比較してかなり小さい3cmの皮膚切開で肋軟骨を採取するので、簡単なわけはないのですが、早ければ1時間以内、遅くても1.5時間位で、恐らく他の施設より1時間以上早いと思います。手術場スタッフも熟練したチームとして非常にテンポよく機能しており、殆ど何も言わなくても、必要な材料を的確に出してくれます。これは中央病院の方でも完璧です。
2)
肋軟骨フレームの組み立て:肋軟骨フレームを組み立てるに当たり、恐らく私以外の方は、3本軟骨が取れてから初めて、どこからどう作製するかを考えると思うのですが、私は1本取れた段階からすぐに作製に入ります。これだけでも1時間近い短縮になります。ただ、これはかなりの経験を積まないと対応できない技だと思っており、フレームのイメージや、肋軟骨のイメージがいつからか自然に頭の中に出来上がっていたので、迷わず間違いなくいけます。小耳症の手術を迷うことなく進めることで、相当の時間の短縮になります。
3)
皮膚の操作:皮膚に負荷をかけずに皮膚の血流を維持して皮下の剥離を行うのは、小耳症手術が難しいとされる一つとして挙げられるのですが、これには全ての指を使って傷の展開をして、視野を広げ、同時にハサミやメスが皮膚に当たる感触を指で確認しながら、一気に行なっていくわけですが、これも他の先生にはなかなかまねできない芸当ではないかと思っています。この操作で指にかかる負荷は半端ではないということを、痛めてみて改めて認識した次第です。
これだけの手術と並行して、再生医療の治験を行っているのですが、現在再生医療法が非常に厳しくなっていて、厚生局への対応、特定再生医療委員会への対応はじめ、膨大な書類の作製、報告書等、ありえない負担がかかります。我々の研究も、こういう作業に精通している東大の臨床研究推進センターの方におんぶにだっこでやっとここまで来たという感じです。この法律だと、人に治験を持ち込めるところまで持って行ける施設も限りなく少なくなってしまうでしょうね。世界からどんどん取り残されていくわけです。
さて、今年もかなり厳しい状況でのスタートになりますが、何とかつつがなく過ごせて行ければと思っております。本年も宜しくお願いいたします。