2022年1月15日土曜日

当科受診について 繰り返しの話になりますが・・・

 

今のところ、4年生以降の方に関しては、できる限り早い時期に受診できるよう努力していますが、元々新患予約枠が2年待ちの状態の中で、苦労して無理やり時間を捻出している状況です。それがどのくらい大変かなかなか理解いただけていないようですが、そもそも私は臨床だけやっていられる立場にありません。外来、年間200件の小耳症手術(勿論その他にも種々の手術をやっていますが)とその術後管理、入院日程等の調整も自分でやっていますので、それだけで一般の医師の仕事よりもかなり多い仕事量だと思うのですが、実際には教授職として大学の各種の仕事、学生、大学院生の講義と指導、教室員の手術、学会発表、論文の指導、人事、関連施設の指導なども当然のノルマとなります。昨年からは、他施設と共同での再生医療にかかわる研究プロジェクトが始まり、また学会理事としての大量の仕事も重なり、土日も含め全く時間が足りない状況です。平日は臨床の仕事だけで一杯一杯なので、勿論この土日も缶詰でその他の仕事をしています(他の教授は通常臨床の第一線から外れるので、これらの仕事がこなせているということです)。 

こんなことをいちいち書いているのは、こちらは身を削って何とかなけなしの時間を作っていますので、それぞれ事情はあると思いますが、それぞれの希望に合わせられるような状況には全くないことを理解いただきたいということです。

また、これも繰り返しますが、手術を組む時は、当然これまで受診されてきた方から優先して組んでいきます。すでに今の2~4年生は、どの学年もすでに100人以上の方が受診されていますので、その方たちの手術を組むのもかなりぎりぎりで、それに加えて手術枠を何枠空けられるかは、組んでみないとわかりません。この10日間で永田クリニックで手術を予定されていた40人以上の方から連絡をいただいていますが、私の体、時間、手術枠、には限りがあるので、全てを受け入れるのは困難であるというのが現実です。従って、何年待っても、どういう状況でもいいのでこちらで、という方以外は、お越しいただいても無駄足になる可能性がありますので、他の施設を当たってください。

手術は当然リスクを伴いますし、合併症も色々なことが起こりえます。そういう場合、信頼関係がお互いの命綱です。初診の1,2歳の頃からお会いして、手術までの長い期間での信頼関係を築いた上で手術を受けた方たちは、術後の指示にも従ってくださる方が多いのですが、4年生で飛び込みで手術希望をされてきた方の多くは、その後何かトラブルが起こらない限り、こちらの指示通りの受診もされない方が多いのが実情です。私が作った耳はトラブルが起きないよう自分で責任を持って術後のメインテナンスもすることにしています。従って手術さえできればOKという感覚でお越しになられる方とは嚙み合わないと思いますので、初めから遠慮いただきたいと思います。近くの病院で診てもらうんではだめですか?とおっしゃるかたもいますが、そもそも年に何人も手術をしていない施設で的確な判断ができるわけないとは思いませんか?

なお、通院に関しては、各手術後2,3か月くらいで一度、その1年後、あとは2,3年毎に大学生位まで、というのが最小限の目安です。

また、砂川市立病院、五稜郭病院を視野に入れる場合、札幌医大を受診する、または直接そちらの病院を受診する、どちらもありですが、どちらにしても私の方にまず連絡をいただいた上でということになります。札幌医大の方受診いただければ、そちらの病院には初診でそのまま入院という形にできると思いますので、事前にあえてそちらの病院の受診をされなくても構いません。原則初回手術をそちらで行なった場合、二回目の手術も同じ病院で行なうようにさせてください。



手術適齢時期について

 HPの方にも、記載しているのですが、メールのやり取りの中で、これまで当科を受診されていない方は、手術時期に関して十分理解をされていないように思いますので、改めて説明させていただきます。 軟骨が適度の弾性を有し、かつ成熟していて、十分な体格を有し、体への少ない負担で十分量の軟骨を得られる、ということから、本来の肋軟骨移植の理想の時期は中学~高校生です。 
小学3年生の肋軟骨断面
中央は軟骨が未熟で十分形成されていないのがわかる。
小学5,6年生でもこの未熟な部分はかなり残っているため、
重要な部位に外側部分が来るよう苦労して作成しているのが実情!


  ただ、1か月近く入院で学校を休むことを考えると、中学生以降では厳しいという現実を考えて、やむを得ず小学校の5,6年まで落としているということです。この手術は早くやって良い点は何一つありませんので、体格に恵まれていても、それより前倒しすることはしません。高校生くらいから徐々に軟骨は硬くなってきますが、大学生くらいまでであれば、軟骨の細工は可能ですし、そんなに遜色なく耳介の形成が可能です。

この方は20歳で手術を行なったが、
全く遜色のない綺麗な耳ができている。

 なお、初回手術から二回目までどのくらい空いても大丈夫か?という点に関しては、確固とした意見をもっていないのですが、これまでの私の経験からは、2年くらい空いた方はいらっしゃるのですが、少なくともそのくらいであれば問題ありませんでした。ただ、耳が硬い頭に張り付いた状態だと、外力からの逃げ道がなく、慢性的な枕の圧迫や、強い打撃などによって、変形を生じてくる可能性はありますので、あまり長く空けすぎないほうが良いようには思います。

2022年1月8日土曜日

永田法と四ッ柳法の違いについて

 永田クリニックでの診察後こちらを受診する方は、外来でゆっくり説明している余裕はないかと思いますので、ここに述べておきます。ちょっと長いですが、しっかり読んであらかじめ理解いただけるよう願い致します。

小耳症の治療に関して非常に簡単に言うと、1960年代にアメリカのTanzerが始めた肋軟骨移植による耳介形成が基本で、その後それぞれの医師がそれにアレンジを加えて進化させた方法が永田法であったり四ッ柳法であったりします。従って違いはあくまで枝葉の部分で、根本的には大きな違いはありません。一部に風船を使って皮膚を伸ばすティッシュエキスパンダー法の併用を行なっている施設もありますが、永田先生も私もこの方法に対してはマイナスの点が利点より多いと考えており、行なっていません。

永田法の最大の功績は、世界に先駆けて、それまで数回に及んでいた手術回数を2回に減らしたこと、皮膚の使い方に関する新しい概念、耳珠部分まで一体化した軟骨フレーム(私もこれらは採用させていただいています)の3点かと思います。ただ、私としては、永田法がどうというよりも、永田先生の精緻な技術により、耳介再建のレベルを一気に挙げたことが何よりの功績だと思っています。“見ても作ったとわからない耳”は、当時はあり得ない概念で、永田先生がその概念を変えたと思います。ただこれは一部の医師のみにしか到達できない領域なので、未だ耳に見えない耳も各地で増産されているわけです。

しばしば、永田法と四ッ柳法の違いを聞かれますが、どちらが良い悪いの問題ではなく、それぞれの考え方の違いによるものです。また耳介再建の根本的な問題として、個々の技量が全ての世界ですので、永田法は永田先生がされていたので良い結果が出ますが、他の先生が永田法をやったら同じ結果になるのかというと、そういうものではありませんし、四ッ柳法も然りです。先日名前を挙げさせていただいた先生たちも、それぞれ工夫をされていると思いますが、こちらに手術を見学にいらしたり、耳介再建学会でもディスカッションしてきた方達なので、比較的四ッ柳法に近いのではないかと思います。

以下に簡単に違いを纏めます。私が認識している知識として記載しますが、もし永田先生が見たら、そこは違うとおっしゃるところがあるかもしれませんが、その点はご容赦ください。

 

1)      耳の形について

永田法は、彼のHPを見ると、細工された軟骨フレームの形が皆同じであることがわかると思います。彼はあの形がもっとも綺麗な耳の形であると考えていたためと思います。作られた耳の大きさも皆同じです。四ッ柳法では、それぞれの耳の型取りをするところから始め、対側耳介の大きさや形の特徴ができる限り再現されることを目標としています。

 

2)      肋軟骨移植について

肋軟骨フレームの作り方は細かな点では違いますが、大きな違いはないように思います。ただし、利用する肋軟骨に違いがあります。

永田法は、第6-第9の4本の肋軟骨で耳を作り、余った肋軟骨を細かく刻んで、胸郭に戻します(胸郭の強度を補強するため)。次の耳介挙上では同側の第4,5肋軟骨、または反対側の6,7肋軟骨を新たに採取します。永田先生は耳の形を何より優先していますので、そのためには軟骨はたくさん必要だという考え方だと思います。

四ッ柳法は、第6-9のうち3本(体格が小さい方では4本)で耳を作りますが、余った軟骨片を一つに纏めて胸部の皮下に移植しておき、耳介挙上時にそれを取り出して利用します。肋軟骨移植において、患者にとって最も負担となるのは肋軟骨を採取することであり、少しでも採取量を減らすことが最優先だと思っているからです。勿論、軟骨が不足するようでは本末転倒ですので、不足しないような軟骨フレームの組み方をしています。

 

3)      耳介挙上術について

挙上した耳の後ろに軟骨移植を追加して、耳介のしっかりした挙上を行なうのは同じです。

永田法では、耳の上の頭皮を切開し、その下にある側頭頭頂筋膜を取り出してきて、耳の裏側を被覆する、皮膚は頭皮から薄く皮膚を採取して、それを移植する方法をとっています。この筋膜の採取は、耳介後面を血流のよい組織で覆うと、長期間経っても軟骨が吸収されないため、とおっしゃっていました。ただし、大きく剃髪をする必要がある、頭皮に大きく傷跡が残る(傷跡に沿った禿ができる)、剥がした範囲の頭皮にも点状の禿が多発する、頭皮の知覚の麻痺が生じる(時間が経つとある程度改善しますが、永久的に知覚が戻らない場合もあります)などが問題かと思います。またこの手術でも新たに軟骨を採取するので、術後2,3日は初回手術時と同様に胸の痛みと動きの不自由が出ます。

四ッ柳法では耳介後面は、耳介後方にある別の筋膜で被覆します。これは、耳介周囲を切開した傷を利用して採取しますので、頭皮の切開は基本行ないません。これで十分血流の良い筋膜で被覆できます。また、移植皮膚は下腹部(外側の腰骨のすぐ内側辺りです)を使います。先に触れたように、胸部に余った軟骨を移植しておき、それを取り出して利用するので、この手術では新たに軟骨を採取しません。従って翌日から元気に動けます。

また、移植する皮膚の違いについて、以下に利点欠点を纏めます。私は全層の皮膚の方が移植後の縮みが少ないので、耳介の挙上が維持されやすいという点を重視して、皮膚の余裕があり、採取部位をそのまま縫合できる腹部の皮膚としています(股に近い皮膚は、将来毛が生えたり移植皮膚の黒ずみが強く出るので、腹部の外側です)。永田先生は傷跡が頭髪で隠れやすいという点で頭皮を採用されているのだと思います。それぞれ利点欠点があるので、どちらが良い悪いの問題ではないことがわかるかと思います。

*すでに初回手術を終えられていて、二回目をこちらで希望される方に関しては、新たに軟骨を採取せざるを得ませんので、反対側の胸から軟骨をいただくことになります(自施設で取ったのであれば、どういう手技で取ったかわかっているので同側から取ることもできるのですが、違う施設で取った場合、もし手技が大きく違っている場合、癒着を剥がすときに胸膜損傷等生じる危険もあるので、安全のため、そうさせていただきます)。ただ、当施設では3cm程度の皮膚切開で採取してますので、傷は小さ目です。皮膚は腹部皮膚を使います。












永田クリニック受診者の皆様へ 2

 多くの方からご連絡をいただいてはおりますが、私が新たに受け入れられる人数はそう多くないので・・・本当に何年待ってもいいという方のみご連絡お願いいたします。

さらに、今度4年生になる学年は、恐らく未来シアターを観た世代の方たちではないかと思うのですが、その年以降新患受診数が急激に増えており、どの学年も100人以上の新患が受診されており、来年再来年あたりはすでに全く余裕がないのです。コロナで手術にストップがかかり予定が崩れるのではないかと戦々恐々としている状況ですし、色々な点でタイミングが悪いなと思っております。早めの治療を希望される方は、他施設での治療をご検討いただけるようお願いいたします。

なお、今年、来年中に何としても手術を済ませたい方への裏技的な案ですが・・・

札幌医大から道内各地域の病院に、大学医師を随時派遣しています。私も12か月に1度、手術、外来、指導の目的で出張に行っております。そこにいる常勤医は、大学で私と手術、術後管理を一緒にやってきており、しっかりした対応ができるので、地元の方達の小耳症の手術はそちらでやっています。その施設の先生と相談をしたところ、受け入れしても構わないと返事をいただきました。。小児科、麻酔科等他科のバックアップもしっかりしている病院というと限られてしまうので、現時点で対応が可能な病院は以下の二か所です

・函館市の五稜郭病院

・砂川市(旭川と札幌の中間あたり)の砂川市立病院

私が行ったタイミングでそちらで手術をすることは可能で、どちらの施設でも年間数人程度であれば対応できると思います。ただ、私は手術はできますが、術後管理は常勤の先生がすることになりますので、あくまで裏技です。たまたま親が近隣に住んでいるとか、条件的に許される方にはご一考いただいても良いかもしれません。

もしそのような方がいらしたら、私の方までご相談いただければと思います。

ただ、どの病院においても、ですが、コロナの状況によっては、感染拡大地域からの受け入れ禁止とか、2週間滞在後の入院、などの制約がかかるかもしれず、そうなると少々厳しいことになりますが。




 

2022年1月5日水曜日

永田クリニック受診者の方々へ

 

昨日取り急ぎ存じ上げている先生にご相談したところ、以下の先生たちには、軟骨移植、耳介挙上伴に受け入れを快諾いただきました。耳介再建学会でいつもディスカッションをしているメンバーなので、耳の治療に情熱を持っている方々です。

ただ、彼らも自身の手術を多々抱えている中での調整となりますので、そんなに多くの方の受け入れは難しいと思います。

また、私もそうですが、皆それぞれ術式に工夫をされており、永田先生がされている術式とは異なる点がありますので、その点は納得いただく必要があるかと思います。

勿論その他の施設でも熱心に小耳症の治療を行っている方達もいらっしゃるはずですので、あくまでご自身で情報をしっかりと確認の上、ご判断されるよう願っております。

 

(東北)

  鳥谷部荘八先生 仙台医療センター形成外科

(関東)

  佐々木薫先生 筑波大学形成外科

  玉田一敬先生 東京都立小児総合医療センター

(中部)

  加持(かもち)秀明先生 静岡県立こども病院形成外科

(関西)

  塗(ぬり)隆志先生 大阪医科薬科大学形成外科

(中国)

  妹尾(せのお)貴矢先生 岡山大学形成外科

(四国)

  戸澤麻美先生 愛媛大学形成外科

(沖縄)

  笠井昭伍先生 琉球大学形成外科

 

なお、当面の私の方での対応ですが、多少なりと受け皿となるよう努力はしたいと思いますが、当然これまでこちらを受診されてきた方が優先ですので、あくまで手術枠に隙間ができた場合に予定するという形になります。従って、現在小学4年生以上の方で、かつ2,3年待ってでもこちらでやりたいという方に関しては、ご連絡をいただければと思います。


2022年1月4日火曜日

永田先生のご逝去に関して

永田小耳症クリニックの永田悟先生がご逝去されたとのことです。謹んでお悔やみ申し上げます。この件に関連し、すでに私の方に多数の患者から受診問い合わせのメールをいただいております。

しかし、現時点で当施設では、手術枠とベッド数の問題から、本年度手術予約をいただいた方の手術を組むだけでぎりぎりの状況で、その受け皿として対応するのは厳しいと言わざるを得ません。

そこで、今早急に、その方達の受け皿として、小耳症の治療を行っている他施設の先生に対応いただけるかどうかお聞きしてみます。承諾いただけた先生のお名前を数日中にアップしたいと思いますので、まずはそれもご参考にしていただいた上でどこの施設を受診するか等ご検討いただければと思います。

また、私の方でも、私が手術できる手段がないか検討してみますが、この件に関してははっきりするまで2,3か月時間が必要かと思います。必ずしも良い報告ができるとは限らないのですが。


2022年1月3日月曜日

おめでとうございます

 

本年もよろしくお願いいたします。

正月を病院で過ごした子も10名ほどいます。元旦から勉強したら今年1年調子出るよ~と一応お勧めはしてみていたのですが、皆さんほぼごろごろしてゲーム三昧だったようで・・・そして明日からは早速小耳症の手術2件と、年初めからフル稼働となっています。

ちなみに昨年の手術件数は209件でした。一昨年は5月にコロナの影響で手術を全面ストップしたこともあり、195件でしたが、また200件を超えました。私が手術日で耳の手術を組んでいない日は全くなく、飽和状態での手術調整となってます。これから5,6月分の日程調整に入る予定ですが、本当に全員の手術が組めるのか今からかなりどきどきです。

オミクロンもこの年末年始を境にまた一気に増えてくると思います。重症化が高かろうが低かろうが、病院としては一人でもコロナ患者が入り込むとその病棟は閉鎖となり、濃厚接触医師は自宅待機となり、手術もストップとなる状況には変わりないので、入院を控えている方には特に注意深く日々を過ごしていただければと思います。また、体調が完全でなく、感染の可能性がある方は、必ず別の日にまた枠は作りますので、受診もどうぞお控えいただけますようお願いいたします。そもそも熱があると病院に入ることもできません。

この冬は雪が降るのが例年より遅く、有難い初冬だったのですが、昨年末に降り出してからは真冬の寒々した日々が続いております。春が早く来ることを願うばかりです。


車も一夜でこんな有様になります


一見雪の上はふかふかに見えますが、その下にはつるつるの氷が張っていることがあるのでご用心を!