2018年10月24日水曜日

小耳症に対する聴力の今後の展望


北海道の地震については色々とご心配いただき有難うございました。ただ、その2日後には実は信州に行っていたのです。本当は前日に行く予定だったのですが、地震日にやれなくなった手術を翌日に振り替えでやったので、とんぼ返りの日程に変更せざるを得なくなったのでした。このころ北海道はまだコンビニがほとんど機能していなかったので、帰りに松本市のコンビニで種々買い込んで飛行機に乗りこみました。


信州訪問の目的は聴覚と耳介形成の研究会への出席でした。信州大の耳鼻咽喉科、形成外科の教授、国際医療福祉大の耳鼻咽喉科の教授などが集まって意見交換をしようというものでした。私は形成外科の立場からの小耳症について講演したのですが、耳鼻科医にとって私の話は知らないことが多々あったと思います。耳鼻科は今の耳介形成のレベルをあまり認識できていなかったことがよくわかりました。私も耳鼻科の最近の知見や考え方で知らないことが多々あったので、大いに価値のある会になったと思います。これまでこうやって耳鼻科医と向き合ってしっかり話をする機会が今までなかったことにある意味驚きと反省・・・




今後定期的に集まって、小耳症の子たちに、聴力に関しての具体的な流れをきちんと体系立てて提示できるようにしていこうという話になりました。すぐにそれが纏まるものではないのですが、これはしなければならないことですよね。

小耳症の聴力というと、外耳道形成、鼓室形成の有無についてばかりが取沙汰されますが、今機器の発展はなかなか目覚ましいものがあり、それらを上手に選択していくことが得策ではないかというように思います。

小耳症に対して聴力を得る手段としては、

  1. 骨伝導補聴器(いわゆる従来のカチューシャ型)
  2. 軟骨伝導補聴器(耳かけ式)
  3. 外耳道、鼓室形成(手術により外耳道構造を獲得しようとするもの)
  4. BAHA(手術要)
  5. 人工中耳(手術要)

などがあげられますが、耳鼻科医と話していてわかったことは、実は耳鼻科自体の中でも統一見解が全然ないのですよ。例えば3.をやっている人はそれ押しで勧めてきますし、2.なんかも一大学での開発なので、他の大学ではあまり高い意識でとらえられていないですし。それぞれの施設でそれぞれ力を入れているものを強く推すので、結局どういう状況で何がベストなのか、実ははっきりしていないのです。

また、2. 5.に関しては最近新たに選択肢に加わってきたものですので、各々の利点欠点を含めて公平にジャッジして提示する必要性があります。本来耳鼻科医が主導で考えなければいけないことではあるのですが、耳介形成も前提として、種々の手段のタイミングや治療の流れを作っていくことが必要ですから、我々も大いに参加して意見を入れていかないといけないと思いました。何より我々は企業との直接の利害関係がないので、もっとも患者目線で公平にジャッジできる立場ですからね。


ちなみに、国際医療福祉大学三田病院の岩崎教授、野口教授は今人工中耳に力を入れており、これは音域がかなり良さそうです。欧米ではすでにかなり普及しているようで、今後の主流になってくるような気がします。人工中耳は国内ではこの施設が最も多く手掛けています。小耳症では内耳は通常きちんと形成されているので、内耳まで音を入れてあげることでかなり聞こえるはずです。手術で中耳に直接端子を付けるので、振動の不快感が少なく、音を内耳に伝達しやすいこと、皮膚の上から(耳の後ろ、やや上)磁石で装置を装着するものなのでBAHAのような皮膚トラブルがない、BAHAの年齢制限の15歳以上での手術より低年齢でも可能であることなどが利点です。
欠点としてはBAHAに比べ手術の難易度が高い(彼らはこれまで同様な装置の人工内耳を多数やっているので技術的には問題ないと思います)、我々と連携していない耳鼻科医がやると耳を作る時に迷惑な皮膚切開線ができてしまう、耳を作る前にこれをやると耳を作る時の難易度も増す(これは私の方で何とかします)、強い衝撃があると中耳の端子が外れてしまう可能性、磁石で皮膚に圧迫がかかることなどでしょうか。現在治験を行っているそうで、来年3月までにエントリーすれば、恐らくあまり費用が掛からず治療が受けられるのではないかと思います。私のところを受診された方で、直接話を聞いてみたい、という方がいらっしゃいましたら、紹介状書きますので遠慮なくご連絡いただければと思います。

松本市の保存された街並み

松本城は美しい!








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